ビロードの口づけ
少しして広い空間に抜けたようで、音が消え、ジンが速度を緩めた。
クルミはゆっくりと目を開き、少し顔を上げて辺りを見回す。
そこは玄関から正門へと続く大通りの途中だった。
通りの両脇には小さな灯りが正門まで真っ直ぐに並んでいた。
普段はもっと高い位置にいくつかガス灯がついているだけだ。
すぐ脇にある灯りに目をやると、ガラスの器に入ったろうそくの灯りを使用人たちが、ひとつづつ掲げている事が分かった。
クルミと目が合った侍女が笑顔を浮かべて手を振った。
灯りの並ぶ通りを弾むような足取りで、ジンはゆっくりと進んでいく。
すれ違う使用人たちが、次々にクルミに手を振ったり頭を下げたりした。
(嘘つき! 思い切り人目についてる)
そう思ったが、獣王の生贄ではなく花嫁として、皆が祝福して送り出してくれている。
それが嬉しくて涙があふれた。
父がジンの事を認め、偏見を捨てて獣と付き合っていく事を示したのだろう。
クルミはジンの背中で少しだけ身体を起こし、手を振る代わりに笑顔で頷いた。
クルミはゆっくりと目を開き、少し顔を上げて辺りを見回す。
そこは玄関から正門へと続く大通りの途中だった。
通りの両脇には小さな灯りが正門まで真っ直ぐに並んでいた。
普段はもっと高い位置にいくつかガス灯がついているだけだ。
すぐ脇にある灯りに目をやると、ガラスの器に入ったろうそくの灯りを使用人たちが、ひとつづつ掲げている事が分かった。
クルミと目が合った侍女が笑顔を浮かべて手を振った。
灯りの並ぶ通りを弾むような足取りで、ジンはゆっくりと進んでいく。
すれ違う使用人たちが、次々にクルミに手を振ったり頭を下げたりした。
(嘘つき! 思い切り人目についてる)
そう思ったが、獣王の生贄ではなく花嫁として、皆が祝福して送り出してくれている。
それが嬉しくて涙があふれた。
父がジンの事を認め、偏見を捨てて獣と付き合っていく事を示したのだろう。
クルミはジンの背中で少しだけ身体を起こし、手を振る代わりに笑顔で頷いた。