ビロードの口づけ
鬼畜眼鏡とお嬢様 短編Ver.
連載前に短編で書いたものです。
時間的には「3.獣の社会」と「4.揺れる心」の間になります。
************************************************
左斜め後ろが気になって仕方がない。
レースのカーテン越しに朝日に照らされた明るいダイニングルームで、私は静かに朝食を摂っていた。
いつもはひとりだ。
母は朝が苦手なので、朝食の席にいたことはない。
けれど今日は、いつも忙しくて滅多に家にもいない父が、珍しく一緒に朝食の席に付いている。
それがまた、私の緊張に拍車をかけていた。
親子なのに、顔を合わせることも、会話をすることも滅多にないのだ。
その父が私の身を守るためにと雇ったのが、左斜め後ろに控えている彼、サエキ・ジン。
長身で細身の彼は、物腰も柔らかく、ボディガードだと言われなければ想像もつかない。
黒髪にいつも黒っぽい服装で銀縁のメガネをかけている。
どちらかと言えば、執事のようだ。
武器になるようなものは、一切携帯していない。
そんな風で本当に護衛の役に立つのだろうかと、最初は疑っていた。
時間的には「3.獣の社会」と「4.揺れる心」の間になります。
************************************************
左斜め後ろが気になって仕方がない。
レースのカーテン越しに朝日に照らされた明るいダイニングルームで、私は静かに朝食を摂っていた。
いつもはひとりだ。
母は朝が苦手なので、朝食の席にいたことはない。
けれど今日は、いつも忙しくて滅多に家にもいない父が、珍しく一緒に朝食の席に付いている。
それがまた、私の緊張に拍車をかけていた。
親子なのに、顔を合わせることも、会話をすることも滅多にないのだ。
その父が私の身を守るためにと雇ったのが、左斜め後ろに控えている彼、サエキ・ジン。
長身で細身の彼は、物腰も柔らかく、ボディガードだと言われなければ想像もつかない。
黒髪にいつも黒っぽい服装で銀縁のメガネをかけている。
どちらかと言えば、執事のようだ。
武器になるようなものは、一切携帯していない。
そんな風で本当に護衛の役に立つのだろうかと、最初は疑っていた。