ビロードの口づけ
「憎んではいない。嫌いなだけだ」
やはり歪んでいると確信する。
あんな優しい表情を湛えて、冷たい言葉を投げつけるなど。
「ひどい……」
目を閉じると、涙が滲んできた。
「だが、あんたの涙はオレを酔わせる極上の甘露だ」
言葉と共にジンは、私のまぶたに口づけ、舌先で涙を拭った。
この男は危険だと本能が告げている。
父は私を獣から守るために、とんでもない獣を私のそばに置いたような気がする。
(完)
やはり歪んでいると確信する。
あんな優しい表情を湛えて、冷たい言葉を投げつけるなど。
「ひどい……」
目を閉じると、涙が滲んできた。
「だが、あんたの涙はオレを酔わせる極上の甘露だ」
言葉と共にジンは、私のまぶたに口づけ、舌先で涙を拭った。
この男は危険だと本能が告げている。
父は私を獣から守るために、とんでもない獣を私のそばに置いたような気がする。
(完)