ビロードの口づけ
 獣王は血筋や名声による世襲はない。
 もちろんただ強いというだけで周りからの信頼がなければすぐに蹴落とされる。
 反感を買えばその数だけ自分に跳ね返ってくるからだ。

 常に周り中から監視されているようなもので、弱みを見せれば取って代わろうとするものにつけ込まれる。
 カリスマも必要となる。

 だが一旦王と認められた者には、皆絶対服従。
 逆らった者は生きていられない。


「女の獣もいるんですか?」
「いなければ繁殖できないだろう」
「じゃあ、女が獣王になる事もあるんですね」
「理屈ではありえるが、実際にはありえない。女は男より力が弱い。獣王を倒した者が次の獣王になるんだ。一番強い奴を倒せる女はまずいないだろう」


 獣王は自らが王座を退くか、獣王戦によってのみ交代する。
 王が退いた場合は複数の立候補者で順番に戦う事になるが、そうでない場合、王になりたい者は獣王に一騎打ちを申し出て勝たなければならない。

 闇討ちや武器の使用は禁止されているので、力のみが物を言う。
 女には勝ち目がない。

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