ビロードの口づけ
恐怖と絶望に身体が震え、知らず知らずに涙があふれた。
すると目の前の獣がうなるのをやめた。
黒光りする鼻をヒクヒクさせながら顔を近づけてくる。
とうとう食いつかれると思い、クルミはギュッと目を閉じた。
品定めするかのようにクスクスと匂いを嗅ぐ音と共に鼻息がかかる。
冷たい鼻と口元の短い毛が頬をかすめ、反射的に身を固くした。
次の瞬間、獣のザラつく舌がクルミの頬をペロリと舐めた。
「ひっ……!」
思わず漏れた声を慌てて飲み込む。
この期に及んで、獣を刺激しないようにとまだ考えているのが滑稽だった。
獣はクルミの声にも動じることなく、再び頬を舐めた。
そして反対側の頬や閉じられたまぶたを何度もペロペロと舐める。
いつ食いつかれるかと気が気ではないクルミは、声を殺してじっとしているしかなかった。
だが獣は一向に食いつく気配を見せない。
すると目の前の獣がうなるのをやめた。
黒光りする鼻をヒクヒクさせながら顔を近づけてくる。
とうとう食いつかれると思い、クルミはギュッと目を閉じた。
品定めするかのようにクスクスと匂いを嗅ぐ音と共に鼻息がかかる。
冷たい鼻と口元の短い毛が頬をかすめ、反射的に身を固くした。
次の瞬間、獣のザラつく舌がクルミの頬をペロリと舐めた。
「ひっ……!」
思わず漏れた声を慌てて飲み込む。
この期に及んで、獣を刺激しないようにとまだ考えているのが滑稽だった。
獣はクルミの声にも動じることなく、再び頬を舐めた。
そして反対側の頬や閉じられたまぶたを何度もペロペロと舐める。
いつ食いつかれるかと気が気ではないクルミは、声を殺してじっとしているしかなかった。
だが獣は一向に食いつく気配を見せない。