ビロードの口づけ
4.揺れる心
鏡台の前に座ったクルミは、鏡に映る自分の姿をぼんやり見つめた。
亜麻色の長い髪は細く猫毛でふわふわしてあまり艶がない。
母のように艶のある濃いブロンドならよかったのにと時々思う。
大きな緑の瞳と丸顔のせいで少し幼く見える。
見た目は普通の娘だろう。
けれどあの夜ジンは言った。
間違いなく極上の女だと。
獣を引きつける甘い香りは、一種のフェロモンなのだろう。
けれどそれが人間に作用する事はちっともないのだ。
その証拠にクルミは人間の男性を引きつけた事は一度もない。
人見知りで引っ込み思案のため、存在に気付いてもらえない事すらあった。
まだ学校に通っていた頃、クルミには憧れた先輩がいた。
帰りに突然雨が降った時、途中まで傘に入れてくれた事がある。
家まで送ってくれると先輩は言ったが、途中で迎えに来た馬車に出会ったのだ。
二人で一つの傘に入り、他愛のない話をしながら歩くのはとても楽しかった。
もっとも、クルミはドキドキして、ほとんどまともに話す事はできなかったけれど。
亜麻色の長い髪は細く猫毛でふわふわしてあまり艶がない。
母のように艶のある濃いブロンドならよかったのにと時々思う。
大きな緑の瞳と丸顔のせいで少し幼く見える。
見た目は普通の娘だろう。
けれどあの夜ジンは言った。
間違いなく極上の女だと。
獣を引きつける甘い香りは、一種のフェロモンなのだろう。
けれどそれが人間に作用する事はちっともないのだ。
その証拠にクルミは人間の男性を引きつけた事は一度もない。
人見知りで引っ込み思案のため、存在に気付いてもらえない事すらあった。
まだ学校に通っていた頃、クルミには憧れた先輩がいた。
帰りに突然雨が降った時、途中まで傘に入れてくれた事がある。
家まで送ってくれると先輩は言ったが、途中で迎えに来た馬車に出会ったのだ。
二人で一つの傘に入り、他愛のない話をしながら歩くのはとても楽しかった。
もっとも、クルミはドキドキして、ほとんどまともに話す事はできなかったけれど。