ビロードの口づけ
兄の隣に腰掛けたクルミは、侍女が運んできたお茶を飲みながら尋ねた。
「今日はどんなご用で?」
「クルミの顔を見に来たんだよ。獣に襲われたと聞いたら心配でいても立ってもいられなかったんだ」
「私のためだけ?」
「当たり前じゃないか。僕のお嫁さんになる前に獣なんかに横取りされたらたまらないからね」
兄は目を細め、愛おしげにクルミの頬を撫でた。
兄とは血が繋がっていない。
兄はクルミの遠縁に当たる。
両親もクルミも金髪だが、兄だけ髪も目も茶色だ。
クルミが五歳の時、母が病気で子どもの産めない身体になった。
それで父が跡継ぎとして兄を養子に迎えた。
兄もコウと同じように母親を獣に襲われたらしい。
まだ互いに幼かった頃、忙しい父や病弱な母に代わり一緒に遊んでくれた兄をクルミは慕っていた。
「今日はどんなご用で?」
「クルミの顔を見に来たんだよ。獣に襲われたと聞いたら心配でいても立ってもいられなかったんだ」
「私のためだけ?」
「当たり前じゃないか。僕のお嫁さんになる前に獣なんかに横取りされたらたまらないからね」
兄は目を細め、愛おしげにクルミの頬を撫でた。
兄とは血が繋がっていない。
兄はクルミの遠縁に当たる。
両親もクルミも金髪だが、兄だけ髪も目も茶色だ。
クルミが五歳の時、母が病気で子どもの産めない身体になった。
それで父が跡継ぎとして兄を養子に迎えた。
兄もコウと同じように母親を獣に襲われたらしい。
まだ互いに幼かった頃、忙しい父や病弱な母に代わり一緒に遊んでくれた兄をクルミは慕っていた。