ビロードの口づけ
6.戸惑いと憤り
 兄にやんわりとはぐらかされ、それ以上に問い質す事もできず、気まずい雰囲気のまま他愛のない世間話をする。

 少しして再び扉がノックされ、侍女に案内された見知らぬ男性がやって来た。

 グレーのスーツに身を包んだその人は、ジンと同じくらいスラリと背が高い。
 少しクセのある銀の髪を後ろに束ねて、整った顔立ちは気品が漂っていた。

 どこかの貴族だろうか。
 不躾なほど見とれていたのが気取られたのか、彼の濃いブルーの瞳が一瞬クルミを捉えた。
 クルミは慌てて目を逸らす。

 彼は兄に軽く頭を下げて告げた。


「カイト様。そろそろお戻りになりませんと、会議に間に合いません」
「もうそんな時間か」


 答えて兄は席を立った。
 クルミも一緒に立ち上がる。
 一緒に彼の側へ行くと、兄が紹介してくれた。

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