ビロードの口づけ
7.味方
薄暗い食料置き場の隅で、積み上げられた小麦粉の袋にもたれ、クルミはひざを抱えていた。
しばらくジンに会いたくない。
家庭教師は随分前に帰った。
いつもは教師を見送った後、モモカがジンを呼びに行くのだが、今日は自分が呼びに行くからとウソをついて止めたのだ。
リビングや自室にいれば、呼びに行かなくてもいずれは見つかってしまう。
かといって一人で庭に出るのは父に禁じられているし、なにより獣に出くわすのが怖い。
クルミが部屋にいない事を知ったら、ジンは焦るだろうか。
少しぐらい困ったらいい。
それでモモカが叱られたら申し訳ないとは思う。
思うが、あと少しだけ、ジンに会いたくない。
理不尽な理由で勝手に怒って、彼はクルミを傷つけた。
傷は治してくれたが、胸を触る必要はなかったと思う。
思い出すたび、背中を突き抜けたあの感覚も蘇る。
そしてそれが不快感とは違う事に戸惑っている。
ドレスの着付けをモモカに手伝ってもらう時、何度か触られた事はあるが、あんな感覚はなかった。
相手が男性だからだ。
しばらくジンに会いたくない。
家庭教師は随分前に帰った。
いつもは教師を見送った後、モモカがジンを呼びに行くのだが、今日は自分が呼びに行くからとウソをついて止めたのだ。
リビングや自室にいれば、呼びに行かなくてもいずれは見つかってしまう。
かといって一人で庭に出るのは父に禁じられているし、なにより獣に出くわすのが怖い。
クルミが部屋にいない事を知ったら、ジンは焦るだろうか。
少しぐらい困ったらいい。
それでモモカが叱られたら申し訳ないとは思う。
思うが、あと少しだけ、ジンに会いたくない。
理不尽な理由で勝手に怒って、彼はクルミを傷つけた。
傷は治してくれたが、胸を触る必要はなかったと思う。
思い出すたび、背中を突き抜けたあの感覚も蘇る。
そしてそれが不快感とは違う事に戸惑っている。
ドレスの着付けをモモカに手伝ってもらう時、何度か触られた事はあるが、あんな感覚はなかった。
相手が男性だからだ。