ビロードの口づけ
1.意地悪なボディガード
父が連れてきたその男性は、穏やかな笑みを浮かべ恭しく頭を下げた。
「サエキ=ジンと申します。ジンとお呼びください」
艶やかな黒髪をサラリと揺らして、彼は顔を上げた。
理知的な銀縁眼鏡の奥で、琥珀色の瞳がこちらをまっすぐに見つめる。
ボディガードだと紹介されたが、長身のせいか黒ずくめの服装のせいか、随分華奢に見える。
物腰も優雅で、執事や家令の方が適任のように思えた。
クルミは家の敷地内から出ることを禁じられている。
家の中にいて獣に襲われる心配など、まずない。
ボディガードといっても形だけのものかもしれないと思った。
父はジンをクルミに紹介すると、忙しそうに部屋を出て行った。
最近領内で頻繁に獣の目撃が報告されているらしい。
人が襲われたという話は聞かないが、それで父は忙しいのだろう。
父が治めるこの領地には、隣接して広大な森が広がっている。
そこは獣の森と呼ばれ獣の住み処となっていた。
人が立ち入ることは禁じられている。
獣は人を襲うことがあるからだ。
「サエキ=ジンと申します。ジンとお呼びください」
艶やかな黒髪をサラリと揺らして、彼は顔を上げた。
理知的な銀縁眼鏡の奥で、琥珀色の瞳がこちらをまっすぐに見つめる。
ボディガードだと紹介されたが、長身のせいか黒ずくめの服装のせいか、随分華奢に見える。
物腰も優雅で、執事や家令の方が適任のように思えた。
クルミは家の敷地内から出ることを禁じられている。
家の中にいて獣に襲われる心配など、まずない。
ボディガードといっても形だけのものかもしれないと思った。
父はジンをクルミに紹介すると、忙しそうに部屋を出て行った。
最近領内で頻繁に獣の目撃が報告されているらしい。
人が襲われたという話は聞かないが、それで父は忙しいのだろう。
父が治めるこの領地には、隣接して広大な森が広がっている。
そこは獣の森と呼ばれ獣の住み処となっていた。
人が立ち入ることは禁じられている。
獣は人を襲うことがあるからだ。