ビロードの口づけ
 刺すような冷たい瞳を見るのが怖くて項垂れていると、突然手首を掴まれた。


「詳しい話はあんたから聞くように言われている」


 呆気にとられるクルミを引きずるようにして、ジンはテラスに置かれたテーブルに移動した。

 ジンと向かい合わせに座り、クルミは彼を見つめる。
 ジンは何も言わず、テーブルの上に片手で頬杖をついてクルミを見つめ返している。

 ものすごく居心地の悪い沈黙が続く。

 膝の上に置いた手でスカートをギュッと掴んだ時、ジンがわずかに目を細め、口元に嘲笑を浮かべた。


「茶の一杯も出さないのか? 気が利かないお嬢様だな」
「あっ! ごめんなさい」


 弾かれたように立ち上がったクルミは、部屋の中に戻り壁の呼び鈴を鳴らした。
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