指先から、愛
「今の聞こえた?」
「何が?」
「嫉妬ぐらいしてほしいんだけど、な」
「こんなズルイ男、どこがいいのかしらね?」
「それは……君が一番知っていることだろう?」
連れ込まれたのは会議室。
鍵を閉めたあと、扉に私を押し付けて激しく唇を奪ったのは、会社の人気者であり、私の上司だ。
優しい人という、偽りの仮面をつけたズルイ男。
ねぇ、私たちの関係って一体なんなの?
私の身体が好みだという貴方。
指が長くてキレイな手をした人に弱い私。
彼から、好きだという言葉をベッドの上でも言われたことがない。
それなのに、今日も彼の言いなりだ。
強がりを見せても、悪態をついても……彼は顔を歪めない。
その余裕の笑みを、いつか崩してみたい。