神貫いて輪廻を生きる、それを怖いと早く知れ
そして急に、後頭部に固いモノが押しあてられる。
…銃。
その背筋を凍らせる独特の温度と臭いに鼻をひくつかせ、おかしいな、と男は思った。
背後はすぐ海で、男が一歩でも後退すればすぐに足を踏み外すところであろうに。
男は銃を突きつける何者かにちらと横目を流したが、ただ黒いスーツの細い肩とネクタイが見えるだけで、顔までは見えなかった。
当然か、と男は溜息を吐く。
「両手を上げて、頭の後ろで組んで」
吐息の主は女であった。
それもかなり魅力的な、甘美で淫靡な匂いのする声をしていた。
男が嘲笑うと、背後の女はふくらはぎを蹴って来る。
革靴が酷く痛かった。
「遊びたくはないんです、早くしてください」
「あんた警察?
これって非合法なんじゃない、ちょっと海から戻ってきた市民に銃を突きつけるだなんてさあ」
からかうような口調で男は笑った。
両手は上げず、シャツを持ったまま前で腕組みする。