神貫いて輪廻を生きる、それを怖いと早く知れ
「今ので貴方が指名手配真っ最中のジョン・ドリック・セイバーであるということが解りました。
なので現在これは非合法ではありませんし、そもそも非合法が生業なものですから、貴方に咎められる筋合いはありませんね」
と、女は真面目くさって言った。
やれやれ、とあからさまに大きく溜息をつくと、男は頸を振りながら女の手首を掴んだ。
「……」
「どうして俺がジョンだと解ったのかなあ、顔、見てないよね」
「それは刑務所でゆっくりお話申し上げましょう」
女は腕を掴まれたまま少し銃口をそらし、引き金を引いた。
銃弾は肩を貫通する。
当然ながらセイバーは手を放さざるを得なかった。
「マジかよっ…殺す気かァ!?」
セイバーは飛びのいて使い物にならなくなった肩を抑え、痛みを改めて実感してぎり、と奥場を噛んだ。
「殺しはしません。
せっかく警視庁に協力を依頼された件ですからね、殺してしまっては面目丸潰れです」
それだけは御免ですよ、と、女は笑いもしないでまた銃を構えた。
セイバーのように銃を恐れてくれない人間には、とりあえず死なない程度に傷を負わせ迅速に捕えよよいうのが彼女たちのやり方である。
暗闇の中で浮かび上がる女は案外若く、まだ十代後半にも思えた。
きっとこの女はどうあっても笑いもしないし怒りもしない。
そんな印象を、セイバーは一瞬で感じ取った。