神貫いて輪廻を生きる、それを怖いと早く知れ
獣だ、もう人間じゃあない。
女は半ば呆れ顔をしていた。
といっても、彼女の喜怒哀楽は絶妙といっても過言でないほど上手く表れないので、それが見て取れるのはこの世界で一人だけだ。
「ヒヒヒハハハ、いいよォ、来いよォ、思いっきりぐちゃぐちゃにしてやんよおおおお!!」
「…駄目ですね、もう…はあ。
捜査資料と先ほどまでの第一印象では、もっと理性的で狡猾な脳髄をしているのかとも思いましたが」
ただスイッチの切り替えが速いだけだ。
それも感心すべき素質なのだろうが、しかし日常色んなものに化ける彼女たちにとっては然程驚愕するタイプではない。
ドスドスと、セイバーは気兼ねなしに野生のままの生体で女に向かっていく。
女を捕まえてやろうと撃たれていない片腕を垂直に上げていた。
「…ふん」
女は迷わずその掌に弾丸をぶち通すことを考える。
ゾンビみたいに汚らわしい生き物に、気兼ねなんてするものか。
女は引き金を引いた。
破裂音が響く。
しかしながら。
「………!!」
女は曇り空を見上げた。
黒いシルエットで、飛び上がった獣を数秒間眺める。