神貫いて輪廻を生きる、それを怖いと早く知れ
人間の跳躍力ではないだろう、それは。
ただ数メートル走っただけで、魔物は地面を蹴りあげて垂直に10メートルは飛んだ。
そのまま獣は弧を描いて女めがけて落ちてくる。
物凄い速さで。
女は避けるために足元を蹴る。
飛び上がった瞬間に獣の腕が伸び、張っていた氷がばきばきと割れて獣が海に落ちた。
ざぶんと音をたてて、すぐにまた這い上がって来る。
「ハハハァ、アハ、ハハハ」
大きな舌で口の周りを舐め回した。
石畳に降り立った女は、ゾクゾクと背筋が凍る思いをした。
「ヘタクソォ、どこ狙ってんだよォ」
「…黙れっ!!」
女は唇を噛んで二、三発銃弾を放った。
そのいずれもが、例の獣じみた跳躍と瞬発力で交わされる。
…銃は、専門外であった。
弾丸を交わしながら確実に獣は迫っている。
体術戦となれば、どう足掻けど女の身では適うわけは無い。
どこまでも、あくまで冷静さを努めて女は後退した。
「アッハハハハハ、逃げんなよォ!!」
疾走するために背中を向けた女の長い髪を掴み、セイバーは思い切り地面に叩きつけた。