ぜんまい仕掛けの歌姫 ~儚唄~
私はいつも通り、歌を歌い、お金を稼いでいた。
歌い終わると、たくさんの人がトランクケースの中にお金を入れる。
いつもと変わらない、そう考えながら足元を見た。
すると、足元に丸いものが転がっていた―オレンジだ。
拾い上げ、周りを見ると一人の少年が茫然としながら立っていた
私は初めてカイル以外の人に話しかけた。
「…これ、君の?」
少年はハッとしながら答えた。
「あ…はい、僕のです」
ずいぶんと弱気な感じだなぁ…そう思いながらも私はオレンジを少年に渡した。
しかし、不思議な感じがした。
「…リール」
私は自分の名前を口にした。
なぜだろう?私はこの少年と話してみたいと思った。
「え?」
「私の名前、リールって言うの」