甘々ストロベリー*。
――その、次の日。
「ヤツの人気はすごいねー」
「……うん」
騒がしい連中を遠巻きにしつつ、私と沙耶の話題はもっぱらあの連中だ。
もっとも、好きで話題にしているのではないのだけれど。
「おかげで私は自分の席に座れないからねー」
「ヤツは取り巻く程、ズバ抜けた才能の持ち主、って訳でもなさそうだけどね」
そう言う沙耶は、朝だというのにポテチを頬張っている。
ヤツ、とは。
私の隣の席のヘンな人――永瀬 悠(ながせはる)のことだ。
彼のその独特の雰囲気なのか、整った顔立ちなのか――。
それは定かではないが、彼を取り巻く男女合わせて10人程の、いわゆる“連中”に私が迷惑しているのは事実だ。
わはは、と時々起こる大きな笑い声。その中心にいるのが沙耶いわく“ヤツ”なのだ。
まだ入学式が始まって一ヶ月しか経っていないのに。
そんな彼と隣の席になったのは幸か不幸か。