恋愛遊戯【完】
広げていた文房具類を筆箱に詰め、更にそれをリュックの中に乱雑に放り込んだ彼は、
「よっしゃ、先生に課題渡してさっさと部活行くとするか」
と、あたしに見せつけるように清々しく大きく伸びをする。
至極わざとらしく。
一方あたしのプリントはさっきから何も進んでおらず、空欄が目立っていた。
「……ね、写させてくれたり、とか、は……?」
「自分で解けよバカ」
「デスヨネ」
ナツメはそういうやつだ。ケチなやつだ。
「じゃーなブス。せいぜいがんばれよ」
奴はさっさとリュックを背負うと向かい合わせにしていた机を元の位置に戻し、教室を出て行こうとする。
ほんっと口が悪い。冷たい。ナツメは優しくない。
「……あのさ、ナツメ」
「ん、なに」
ナツメが扉に手をかけた瞬間、思わず呼びとめてしまって、振り返った彼と目が合った。
「ナツメはあたしのこと嫌い?」
「……は?」
ポカンとして、ぼけっとして、呆けているような、息を吐き出すように呟いた口を開けたままのその間抜けな顔が面白くて思わず笑う。