指輪にまつわるエトセトラ
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「……また随分と派手な叫び声だな。なにこれ、山岡のプライベート映像?」
「…佐久間さん」
編集機を回していた手を止めて後ろを振り返ると、社長が口に手を当てて、笑いを噛み締めながら立っていた。
佐久間真哉。
映像制作会社:スタジオSSの若き社長。同時に…私の雇い主でも、ある。
「山岡が珍しくオフ日に会社来てるって言うから。ちょっと興味をそそられて来てみたら。何やってんだ、お前。」
「…私用で編集室を独占して申し訳ありません。でも今日は空いてるから使って良いってゲンさんが…」
「もちろん、使用許可はもらってるよ。OKを出したのは俺さ。」
"じゃあ、社長のあなたがわざわざここへ何の用ですか"とは―…聞けなかった。
何となく、ヤブヘビになりそうだから。
機械だらけの編集室は、狭い。
必然的に、人と人との密着度が高くなる。
攻撃を仕掛けるフックなんか、与えてやるもんか。
「で、何をそんなに一生懸命作ってんの。」
そんな私の胸の内を知ってか知らずか、佐久間さんはパーフェクトな笑顔をこちらに向ける。
ピカン!
と音のしそうな程白い歯。
―…この人、悪い人じゃないんだけどな。
どこからどこまでも、作り物っぽくて嘘くさいのよね。