指輪にまつわるエトセトラ
「―…たまんないな。山岡、そんな顔をして笑うんだ。いつもクールに仕事をこなしてるのに。妬けるな……。この笑顔が、彼だけのものだなんて。」
不意に佐久間さんの顔が近くなる。
キチンと剃られた髭。
手入れの行き届いた肌。
完璧な甘いマスク。
夜景の見える高級ホテルのレストランで、ワインを片手に食事するのがお似合いだな、と思った。
何なら、テーブルの下から指輪でも差し出されそうだ。
女の子なら誰でも憧れる相手とシチュエーション。
でも―…
それは、私を幸せにするものではない。
「佐久間さん、私の彼はね、ひとつだけ誰にも負けない特技があるんです。それはね、”私を笑わせること”。
ううん、私だけじゃない。みんなを笑顔にするんです。―…ホラ。」