指輪にまつわるエトセトラ




"バイィ〜〜〜〜ン"



人気のないプールに間の抜けた音が響く。



『キャァァァア!!』


続いて、まだ若い私の慌てた声。

画面には、飛び込み板をしならせた男が腕を派手に打ち付けたあと、見事な3回転半を決めて水面に吸い込まれる様子が映っている。

その姿の、なんと滑稽なこと。

完璧な間、完璧なオチ。
非の打ち所のないおかしさである。





「――…ぶっ」

佐久間さんが吹いた。




ああ、何回見ても笑える。
我ながら、よくカメラに収めたものだと思う。

ジャンプに失敗した割にちゃんと水中に入っていった彼も見事だが、自分の恋人が一大事というのにカメラを回し続けた私も私だ。

カメラマン魂、ここにアリ!といったところか。見事、と誉めていいやら悪いやら。


でも、何だかんだこれがキッカケで、私はカメラを回すことの楽しさに目覚めたのだ。

曲がりなりにも、女だてらにカメラマンとして飯を食っている、いまの私があるのは彼のおかげと言っていい。






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