30 thirty~恋する大人のものがたり
第1章
act 1 .......30
来月で30になる
魚屋の次男坊の俺
兄貴がいるのだが、今はどこへ行ってしまったのやら。
最後に会ったのは8年も前のことだ。
父親も母親も、そんな兄貴をあきらめ、俺に「山田魚店」を
継がせようと必死だった。
でも俺も教師の道を進み、山田魚店は絶たれるはずだった。
しかし去年の夏、父親が交通事故に遭い、その68年の生涯を
あっという間に閉じてしまったために、俺はまた、あの魚臭い
実家に戻ったんだ。
退職という選択をし、今月から山田魚店を手探りで始めたが
右も左も分からない。そんな状態だ。
どうでもいいが、来月で
彼女いない暦も30周年を迎えちまう、俺。
俺って冴えねぇかなぁ。
とりあえずまだ髪は、ある。
太ってもいないし、今までそうなりそうになかったってことも
なかったってわけでもない。
もちろん、あっちの世界の人間ってわけでもない。
俺って変わってるんだ、コレ、って思う女がいなかったってのも
大いにある。
なぁんて、合コンなんか誘われもしないし、興味も無かったんだよなぁ。
大学のときも4年間いったい何をやっていたのだろうか。
こっちのほうもどうにかしないと。
小学校の教諭から魚屋への転進。
ますます女から遠ざかっていくぜ。俺。
「啓太、この伝票整理しといてー」
「啓太ートウヤホテルの請求忘れないでね」
「啓太ー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
母親とする会話なんて一日中指令、それのみ。
子供のころから魚屋のクセに魚が苦手だった。
あの妙に艶々な目も
開きっぱなしの口も苦手で、手で触れるのはいやだった。
魚屋なのに、魚をさばいたことなんて一度も無かったし、父親から教わったことも無い。
継がせたがっていた割には何も教えてくれなかったなぁ、親父・・・・
魚屋の次男坊の俺
兄貴がいるのだが、今はどこへ行ってしまったのやら。
最後に会ったのは8年も前のことだ。
父親も母親も、そんな兄貴をあきらめ、俺に「山田魚店」を
継がせようと必死だった。
でも俺も教師の道を進み、山田魚店は絶たれるはずだった。
しかし去年の夏、父親が交通事故に遭い、その68年の生涯を
あっという間に閉じてしまったために、俺はまた、あの魚臭い
実家に戻ったんだ。
退職という選択をし、今月から山田魚店を手探りで始めたが
右も左も分からない。そんな状態だ。
どうでもいいが、来月で
彼女いない暦も30周年を迎えちまう、俺。
俺って冴えねぇかなぁ。
とりあえずまだ髪は、ある。
太ってもいないし、今までそうなりそうになかったってことも
なかったってわけでもない。
もちろん、あっちの世界の人間ってわけでもない。
俺って変わってるんだ、コレ、って思う女がいなかったってのも
大いにある。
なぁんて、合コンなんか誘われもしないし、興味も無かったんだよなぁ。
大学のときも4年間いったい何をやっていたのだろうか。
こっちのほうもどうにかしないと。
小学校の教諭から魚屋への転進。
ますます女から遠ざかっていくぜ。俺。
「啓太、この伝票整理しといてー」
「啓太ートウヤホテルの請求忘れないでね」
「啓太ー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
母親とする会話なんて一日中指令、それのみ。
子供のころから魚屋のクセに魚が苦手だった。
あの妙に艶々な目も
開きっぱなしの口も苦手で、手で触れるのはいやだった。
魚屋なのに、魚をさばいたことなんて一度も無かったし、父親から教わったことも無い。
継がせたがっていた割には何も教えてくれなかったなぁ、親父・・・・