手すり向こうの楽園へ
衝動に駆られて、かの地へ踏み出す
雨が体をなじる。
シャツが体に張り付き、足にかかる負荷を多くしていた。
意味もなく外に出た。入院している病院の外、本来ならば就寝時間であり外出禁止のはずなのだが、私は自由に出歩いていた。
病院の非常階段、鉄を組み合わせた簡単な踊り場が私の体重でぎしぎし軋む。この音で誰かに見つかったらと思ったが、外は雨が降っていた。
金属に当たる水滴が私の足音を塗りつぶす。無色な液体のくせして、私の存在の隠れ蓑になるだなんてと鼻で笑った。
転落防止の手すりを掴み、下を覗き込めば、じゃりが敷き詰められた地が見えた。
隅っこにある花壇が蛍光色のパンジーを咲かせていたけど、雨でしだれて枯れかけのように思え、まったくもって心が癒されなかった。
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