手すり向こうの楽園へ
癒してくれなどしない、そもそも何が癒しか分からなくなっていた。
癒されない、満たされない、何を求めているかも分からないがしたいことはあった。
にんまりと知らずになっていた口元を掴んだあと、両手で手すりを掴み、乗り越えた。
ずぶ濡れの体はさぞや早く落下するだろうと、手すりから落ちたんだ。
人間よりも雨が早く落ちるんだな、と上空を仰ぐ。
やった、やってやったぞと妙な達成感を覚え、哄笑しようとした矢先――ふいに、体が止まった。
時間が止まったのかと思えようほど、唐突に不自然に。けれども私の体を受け皿代わりにする雨で“止まっているのは私なんだ”と知った。
――馬鹿げている。
「なんで……」
馬鹿馬鹿しい。
せっかく、やってやったというのに。