手すり向こうの楽園へ
それこそ目が覚めるような色。彼女の名前を呼ぼうとする前に、前髪と共に目元を指先でなぞられた。
彼女の細い指先に移った水玉は私の視界を塞いでいたもの。未だに降り続く雨のせいですぐにまた二の舞みたいなことになったが。
刹那の光景が網膜に焼き付く。
心の底からしまったなんて思い、いいや、こんな感情は彼女に失礼かと奥底に沈めておく。
泣いていた。
笑って泣いていた。
安堵して泣いていたんだ。
良かった、と私の無事を喜ぶのはもうこれまでと言わんばかりに、彼女が私の肩から上を抱いた。