手すり向こうの楽園へ
きつく縛る腕に手を添えれば、この細い腕にこんな力が?と愚問たるものを思ってしまう。
怒らせてしまった。
「……」
ごめんの言葉が言えなかったのは、彼女の求めている言葉がそれではないと分かっていたから。
他の言葉なんかいらない。
ただ彼女は私に、『もうしない』と約束を求めていた。
私は彼女が好きだ。だから約束をするのもやぶさかではないが、好きだからこそ嘘をつけなかった。
私は嘘がつけない。
彼女のためになる嘘さえも、嘘が嘘であると彼女に教えるのが怖いから。
「……、ごめん」
やはりこれしか思い付かない私を責めて、どうかあなたの嫌な感情を吐き出してください。