あだしちぎり


「お金はいつものところに振り込んでおいてね」

「わかってるて。それより送ってこか?」



駅の前で尋ねる茂弥に美咲は静かに首をふった


「契約第二項」

「詮索はしないやったな。わかってるて」

「大丈夫。子供じゃないんだからひとりで帰れるよ」



笑うと茂弥の首に腕を回して頬にキスをした。


端からみれば幸せそうなカップルにしか見えないけど間違ってもそれは恋人に対するキスじゃない



「今日は久しぶりに会えて良かった。また電話してね」


楽しみにしてる


そう囁いて美咲は身体を離した


「それ客みんなに言うてるやろ」

「それは内緒」



唇に軽く人差し指を当てて美咲は魅惑的に微笑んだ





「最終出ちゃうから行くね」

「また電話するわ」




手を振って美咲は茂弥に背を向けた

その後ろ姿を茂弥は追うけど美咲は絶対に振り向かない



そうして夜の街を舞う蝶は駅の構内へと消えていった


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