オレンジ・ドロップ

 やっぱり昨日の電話のもう一人は荻野なんだ

 さっき飛んできた声で確信した

 じゃ、なんで橋渡しなんかしたんだろう?

 益々分からなくなる 


 「質問かえるね♪」

 恵ちゃん

  まだ続くのですか?


 「サヤの好きな人って誰?」

  うっ


 「いないって」


 「じゃぁ……口で言うの恥ずかしいなら紙に書いてよ」

  書けないよ~


 「恵ちゃんの好きな人は誰?」


 「私は今も昔もいないもん」

  ずるい!


 「本当はいるんでしょ? 誰にも言わないよ♪」

  ……鋭い


 「だってさ、おかしいじゃん。本当に好きな人もいないんなら付き合えるはずでしょ?」


 「……」


 「女の子なら男の子に付き合ってくれって言われて嬉しくない子なんていないよ」


 「……」


 「じゃ、今は無理には聞かないけど、言えるときなったら教えてね」
 
 多分ずっと言わないと思う

 彼女を傷つけないように笑顔だけ返す


 この時、恵ちゃんに言っていれば楽になれていたのかもしれない 




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