オレンジ・ドロップ

 夕食を終え、いつものように2階の自分の部屋でくつろいでいる

   トゥルルルルル……
 
 電話が鳴る

  いやな予感

 そう思いながら電話を出る


 「ハイ。佐山です」


 『俺だけど』

  やっぱりコイツか!
 しつこいよ

 って“俺”で私も解る様にまでなってるし


 「なんでしょうか?」


 電話の向こうでジレッたそうにする女の人の声がするような

 聞きなれない一人の女性が電話口に出る


 『ねぇ貴女、こんなに好かれてるのにどうして彼に答えてあげないの?』


 「どちら様ですか?」


 『私は彼の幼馴染で、大川茜。彼苦しんでるのよ? 何で付き合ってあげないのよ』

  そんなに言うなら貴女が付き合えばいいじゃない?


 「そんな事、貴女には関係のないことでしょう?」


 『そうね、関係ないわね。 でも、彼を見てられないのよ』


 「はぁ……」

  なんなのさ!!


 『彼はいい人よ? それは貴女も分かるでしょ?』

 「……」

  わかりません

 大体最初に名前も名乗らないし

 今度は偽名を使うし

 分かりたくもありません


 『もう一度彼に代わるわ。私は、今日は帰るし後はゆっくり二人で話しなさい!』


  だから話したくないんだってば

 再び勝手に電話の相手が代わった




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