オレンジ・ドロップ

 目の前にいる陽り色の男の子にドキドキしながら、ふと昨日の出来事を思い出し、背筋が凍りつく。

 一度気になったら止められない

 ―― 休み時間


 クラスの人達に夏井の事を聞いてまわった。


 「ねぇねぇ、8組の夏井さんてどんな人?」


 「いい子だよー」


 「ふ~ん」


 「何で~?」


 「いや別に……私、彼女が嫌いなだけ」


 「どうして?」 


 「……(笑)」

 私は、曖昧に笑みを浮かべるだけ

  言えるわけないよ

  こんな事が彼女の耳に入ったりしたら?

 考えただけでもゾッとする。


 それにしても、聞く人聞く人、皆が彼女を“いい子”というのには正直ビックリ

  結構評判はいいんだぁ 

  まぁ、黙ってりゃぁ顔立ちなんかいいからね


 彼女の事を聞き廻らなければ、後日会わずに済んだのかもしれない

 そんな事考えられるわけもなく。



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