オレンジ・ドロップ

 「私ね、中学の時荻野の事好きだったの。さっき社長が言ってた人」


 「うん」


 「だけど、伝えられなかったんだ」


 「……そう」


 「一度はバレンタインの時あげた……っていうか机にブチ込んだだけなんだけど。その時名前書くの忘れたし多分気づいてない」


 「……」


 初めは相槌を打っていたが、黙って耳を傾けるなっちゃん


 「何度か声を掛けられた事もあったよ。嬉しかったけど、あの頃は恥ずかしいって気持ちが強くてシカトしてきた

ずっと何も言えないまま時がすぎてね

中学を卒業してから一度だけソイツの家の前を通ったとき、窓から呼んでくれた事あったの

けど、その時も……返事しなかったんだよね

それからその窓が開くことはなかったな

ずっと謝りたかったけど、言えなかった 

謝ったところで許しては貰えないだろうな? そう思ったら電話をする勇気すらもてなかったの

何処で何をしているのかも分からなかったし、もう考えるのも辞めようと思って
今日まで来た

……けど、社長の話を聞いてまた思い出しちゃってね

荒れちゃったの……やっぱり私も原因の一つ……かもって」


 誰にも話した事のない胸の内全てを話した




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