オレンジ・ドロップ

「怖え~」

 安堵感を覚えた頃、もう一つ聞きなれた声が飛んできた。
 
 えっ!? この声 

 声のするほうを見上げると、いつの間にここにいたのか、荻野くんが口を挟んだようだ。


「何よ~」

 夏井は彼に笑顔で返している。

 何、この猫女。


「こいつ昔、番長って呼ばれてたんだよ」

 知ってるよ 

 小学校2年の時に高学年の男の子を泣かしたことがあるって 

 それからは、女番長“夏井薗” 

 そう呼ばれていたってね

 なんで、荻野くんがそれを知っているの?

 その答えは直ぐにわかった。


「呼ばれてないよ~」

「オレ、番長~って後くっ付いてたもん」

「バカ言わないの♪」
  
 コイツ男には可愛い顔するんだ

 思い出した!!

 そういえば隣のクラスにいつもも夏井を呼んでる人いたっけ? 

 だけど

 それが荻野くんだなんて……


「とにかく、今度悪口を耳にしたら卒業式にリンチしてやるから!覚えてな!」

「……」
   
 やれるもんならやればいいじゃない!
 
 もう、昔の私じゃないんだから!!

 言葉にならない
 
 彼女たちは風の様に去って行った。




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