オレンジ・ドロップ

 家に帰るなりお母さんにびっくりされた

 訳を話した


 「あら、そう」

 笑顔で一言だけ


 私と紀ちゃんは、家の近くの土手に登って残りわずかの花火を満喫

   ドドーン

   ドーン

 見知らぬ子供たちが誰かに言っているのが耳に届く


 「いいのかねぇ、受験生がこんな所に居て」


  うっ! 耳が痛い

   ヒューン

   パラパラパラパラ……

 私たちに向けられた言葉ではないけれど、思わず紀ちゃんと目を合わせる


 「うちらの事じゃないよね?」


 「……うん多分。知らない子達だし(苦笑)」


 「今日だけ……だもんね」

 今日だけは受験生忘れさせて~

  明日からまた頑張るから~

   ドーン

   ドーン 

 心の中で呟き、束の間の現実逃避を楽しむ私達




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