喰われにきたって、いいなよ
「この、バカ……」
ーーぇ?
一瞬で反転する世界。
なぜ満月が見えるのか、
状況を理解するより早く、
彼のキスが私の思考を奪う。
数秒後、
銀の糸をひきながら離れた唇。
「……何しにきた?言えよ」
覆いかぶさるように私を覗き込む、
獣みたいな目に見覚えなどない。
でも、
「喰われにきたって、言えよ」
答えなんか決まってる。
「顔、真っ赤だ」
「ぁ……」
「首も、すげぇうまそう」
口元から見える八重歯は、
牙みたい。
ーー残さず食べてね?
「……愛してるよ」
そう言うと、
甘く噛み付いて、
彼は私をむさぼった。
fin