あなたの隣が就職先
「あの……僕が言うのもなんですが。本当に彼女と結婚してもいいのでしょうか?」
彼女は一人娘。それも教師である僕が未成年である彼女を掻っ攫っていく。普通なら血を見る争いをしてもおかしくはない。
それなのに僕の顔を不思議そうに覗き込んだあと、彼女のお父さんは首を傾げた。
「娘と結婚するつもりでここに来たのでしょう?」
「そ、それはもちろんです」
それには大きく頷く。反対されても彼女と結婚する。その覚悟でここまでやってきた。
しかし、とあれこれ話そうとしていた僕を見て、彼女のお父さんはにっこりと笑った。
「それならいいです。先生なら娘を大切にしてくださるでしょう? 幸せにしてくださるでしょう?」
「それはもちろんです!!」
大きく頷いた僕を見て、彼女のお父さんとお母さんはにっこりと笑って頷いた。
「それなら問題ありません。あの子の未来はあの子自身が決めるべきこと。私たちは彼女が幸せなら何も言うことはありません」
目頭が熱くなった。彼女は大事な大事な一人娘。そんな宝物を僕に預けると言い切ってくれた。感謝でいっぱいだ。
僕は涙を堪えて大きく頷いたあと、お父さんとお母さんの顔を見つめた。
「必ず……必ず幸せにします」
決意新たに宣言をした僕を、温かく見守ってくれた彼女のご両親には一生頭が上がらないだろう。
ふと気がつくと、キッチンからおいしそうな香りが漂ってきた。
今日は結婚記念日だからと、彼女が腕によりをかけて料理を作ってくれている。
手伝うよ、と声をかけたのだけど笑顔で遠慮されてしまった。