私の唇はキス魔に持って行かれました

「っ…!?な、なんだよ!男居んのかよ」
「ちっ、つまんねーの」


金髪のお兄さん達はブチブチ文句を言いながら去って行った


「…奈乃?大丈夫?」

「だ、だだ、大丈夫じゃないよ!!」


今、私は震える声で顔を真っ赤に染めながら怒っている

恐怖から解放された安心感と
またもや奪われた唇に対する怒り
そして、初めて感じる甘酸っぱい感情

そんな、色々な感情が混ざって最後には涙を流した


「怖かった…怖かったっ!もっと早く来てよー!!馬鹿っ、アホぉ、キス魔ー」


霧夜くんはわざわざ探しに来てくれたのに、私は暴言を吐く

でも、霧夜くんは何も言わずに聞いてくれる
そして、頭を撫でて慰めてくれる


「ごめん。すぐに気付いてあげられなくて」


そう言って、泣き止まない私を抱き締めてくれる

いつもなら…
抱き締められたら突き飛ばしていたかもしれない

でも、この時それは出来なかった
なぜなら、霧夜くんの腕の中が異様に安心できたから

だから、不思議と涙も治まっていった








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