片想いだったね
セーターからベストに、ベストすらも脱ぎたくなる暑い教室。
下敷きを扇いだり、好きな歌手の写真のうちわで扇いだりでだらけるクラスメイト。
勿論私とまっすもその中の一人。
「夏休み近いね~…。」
「そうだね~…。」
「来年はさ、アレ出たいな…。」
下敷きもうちわも無い私はノートで顔を扇いで、まっすに汗をかきながら想いを伝える。
吹奏楽部の地区予選。
毎年八月に行われ、自由参加だが勿論入賞すると大きな大会への出場権を手に入るのだが、
「先輩達が出る気が無いんだもん。私達がでしゃばる事は出来ないからね。」
そう言いながらまっすも、予選を辞退した事を聞いて落ち込んだ一人だ。
「私達が三年になったら絶対出ようね。」
「そうだね。」
廊下で翼が小さな扇風機を持って歩いているのを見つけて、その姿に暑苦しくノートを扇ぐ手を強めた。