記憶 ―砂漠の花―
私の中で一つの大きな不安が生まれる。
「まさか、戦争自体がその為だけに…ってことはないよね…?」
私の5歳の時の辛い過去が頭の中をよぎる。
人々をあんなにも苦しめた、沢山の人々をあんなにも殺めた、国を壊した五年間の戦争。
私の母を奪った、
私の心に穴を空けた戦争。
それがマルクという一人の男の、カルラ母上を手に入れたいが為だけのものだとしたら、あまりにも酷すぎる。
「わからない…。」
「仮に、そうだったとしても、なぜそこまでカルラ様に執着するのかも本人に確認するしか分からないな…。」
「それで、マルクは、母上は今どこに?」
大分、酔いも回ってきたであろう、ほんのり赤い顔をしたリオンさんが、それでもしっかりと答えた。
「マルクは、サザエル本島サイルの城に。カルラ様の居場所までは残念ながら特定出来ていない…。すまない。」
「そうですか…。」
アズは小さく溜め息をつくと、グイっともてなされていた飲み物を初めて口にした。
「旨いね、この酒。」
「あぁ、そうだろう?堪能するのは俺も何十年ぶりだろう。」
とキースが懐かしそうに目を細める。
「緑あるエッジ島の果実酒でね。皆もどんどん飲んでくれ!」