記憶 ―砂漠の花―

そんなに沢山は飲んでいない。
なのに『お酒を飲んだ』と認識すると、急に酔いが回ってくるのは、どうしてかしら…


元は宿屋だというこの建物。
2人部屋を2つ用意してあると、リオンさんが説明している。


「えぇ~~!?俺がアイリと一緒がいいぃー!」

「無理。」

わめくアランに即答するアズ。


「…あ、アイリ。ラオウとレンは?」

……あ。

「忘れてたぁ…」


(ぅおい!忘れんなぁ!)
と袋の中から微かにラオウの鳴き声がした。


「じゃあ、寂しげなアラン。二頭を頼むわ。」

「ぅえ~~?」
(はぁ~~!?)

アズは、馬たちが入った袋をアランに手渡した。
袋の中からも、抗議の声。


時間が経つごとに力が入らなくなる体。
ピンク色に火照る肌。

自然と、体を動かすごとに私の口からは、言葉にならないうな垂れた声が漏れる。


「大丈夫…?アイリさん。魔力、暴走させたり…する?」

心配そうに様子を伺うリオンさんに、私の体を支えながら立ち上がり、部屋に向かおうとするアズは笑いながら、

「それは大丈夫です。」

と答えた。


「少し…、いつもより我儘になるだけですから。」

と困ったように笑った。

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