記憶 ―砂漠の花―
「そうそう…良い子だ。いつも通り、大人しく寝ようね?」
いつもより、距離の近い腕枕。
たまにあるこの体勢が、アズにとっては『充電』になるらしい。
ならば私にとっても、これは『充電』。
私もアズの先程叩いてしまった胸板に、顔をすり寄せた。
「アズ~、充電て、さっきの話にまいった?」
「…もぅ、冷静を保つのに、話を自分の中で処理するのに精一杯…。」
まいった、と溜め息をつく。
「…だから癒して?」
甘えた声でそう言うアズは、前にも増して、私の前では子供みたいに振る舞った。
「マルクって、アズみたい…」
「はぁ!?」
アズは急に大きな声を出すと、体を少し引き離し、私の顔を見る。
「さっきは、マルクはアランみたいって話で落ち着いたじゃん。なんで俺!?」
「今そう思っちゃったんだもん。裏の顔のアズ、女たらし?って…。」
男の人は、少なからず皆そうなのかなって。
「…俺の場合は、お前限定だろうが!」
「ふふ…じゃあ許す。私しか知らないアズ…か。」
照れくさくて、うつ向きながら小さく笑うと、急にアズの体が寝そべる私の上へと移動した。