記憶 ―砂漠の花―
父上の表情とは裏腹の、胸の前で組んだ力が入り震える両手が、映像からもそう物語って見えていた。
時に、湿った岩の頭上から、
ポタッ…ポタッ…
と、音を立て滴り落ちる水。
私たちが歩く整っているとは言えないトンネル内部は、その滴で水溜まりだらけだった。
「この地下道…、大丈夫なのか?リオン。上は海だろう…?」
そう訪ねるキースも、この地下道の存在は知らなかった様子で、天井を見上げながら不安にかられている。
この地下道、作った人はただ者じゃない。
火をつけたランプなしでも、それ以上の明るさを道は均等に保っていた。
「この地下道、魔術かかってるよね?」
アランが皆に投げ掛ける。
何を今さら…と言わんばかりにアズは溜め息をついた。
「じゃあ、アイリさん。勉強がてら、この地下道にかかる魔術について解説してみてごらん?」
そう言う突然のリオンさんの提案に、私は戸惑いながら答える。
ざわざわ…
そう自らの血をざわつかせて、この地下道に満ちる魔力を感じ取る。
「えぇ…と。この地下道自体の存在も、魔術によって隠されているし、入り口も出口も…何だろ…、反乱軍の証と意思がなければ反応しないように作られている?」