記憶 ―砂漠の花―
その皆の驚愕ぶりに満足そうに笑っている。
『ここ地下だよな!?』
『海の下だよね?ね?』
二頭の馬たちの感情も高ぶっている。
私は慌てて、彼らの立ち尽くす場所へと駆け寄った。
「何~?私も話に入れてよね!」
「アイリ…、見ろよ。」
アズの指差す方向は、今までの狭い道とは違い、一気に大きく拓けた広い空間だった。
「……は!?」
目の前に広がる光景に、私も彼ら同様に自分の目を疑った。
岩のレンガ作りの家々が、街灯に照らされ見事に立ち並ぶ。
道端に咲く可憐な花たち、
生い茂る涼しげな木々…。
それは、
―――…街だった。
「…すごい…。え?え…?」
それも結構な大きさの、
『地下都市』?
しかし街灯に映し出された街は、地下という事を全く感じさせない。
街を通る小川には茶色の石畳の橋が架かり、小川を上流へと辿れば、遠くには滝まで…。
先生の優しい『緑』色が、淡く街全体に霧が舞うかのように拡がり、街を包み込んでいた。
なんて、幻想的…。
「すごく綺麗…」
透き通った川に反射して映る小さな光の粒たち。
はっ、と天井を見上げると、
そこには金色の星空が広がっている。