記憶 ―砂漠の花―
11・理想郷の黒猫
11・理想郷の黒猫
街には、ゆっくりとした時が流れていた。
ここで暮らしている人々の本当に穏やかな顔は、ラルファの活気ある人々とはまた違う独特のものだった。
街には生活に必要な店もしっかりと構えられ、反乱軍の街とはとても思えない。
サイル本島に嫌気のさした者、虐げられていた者、救いを求める者たちを分け隔てなく、この街の住民に迎え入れた。
すると、その中には物を仕入れる商人や、鍛冶屋、医師、調理人など、あらゆる職に携わる者がおり、自然と街として機能するようになったと言う。
平和や本当の安らぎを求め、このサザエルに流れてきた人々だからこそ、己の欲望や利益に惑わされずに穏やかに過ごせるのだと先生は言った。
街の片隅にある、他の家と何ら変わりのないレンガ造りの一軒屋。
ここが先生の住む家だった。
木の柵に囲まれた広めの庭には緑が溢れ、すぐ横には街の小川へと続く滝が流れている。
水辺の蛍たちが優しく光る。
「さぁ、狭いところだが入ってくれ。ラオウとレンは庭に放しておいて大丈夫だよ。」
『おぉお、自由かっ!素晴らしいな、サザエル。』
ラオウが興奮して鼻息をあらげた。