記憶 ―砂漠の花―
黒い猫は、可愛く首を傾けて高い声で、ニャァ~と鳴いた。
手足の先と口元、所々の白い毛模様が、何とも愛らしい。
『こんにちゃ?こんばんわよ、アイリちゃん。』
ずっと洞窟の中にいた為に時間の感覚がない私を、猫は可愛らしく注意した。
サザエルの天井は、昼になれば明るくなるように外の時間に合わせて設定してあるそうなので、この子の言う通りなのだ。
『いらっしゃい。アタシの名前は、タビ。』
「よろしくね?タビ。」
タビは、ぴょんと、屈んで頭を撫でていた私の肩へと飛び乗った。
『ねぇ、うちのご主人様ったりゃ『解除』するの忘れてるの。アタシお話出来ないの。大事なお話があるって言ってくだしゃる?』
「あらあら…」
タビは多少舌っ足らずの大人びた口調で、私に可愛くお願いした。
彼らはどこだと辺りを見回すと、内部は優しい木の温もりを感じる丸太造りの内装。
彼らは天井の高い居間の中心で、テーブルを囲んで腰を下ろしていた。
この素敵な街と、可愛らしいお友達に頬をゆるめる私をよそに、何やら深刻な雰囲気になっている。
「……?」