記憶 ―砂漠の花―
沈黙する皆の視線の先にいるのは、問題児のアラン。
「…どうしたの?」
「アイリ、アランが急に…」
来い、来い、と手招きするアズの手が、私の顔の横に寄り添うタビの姿を見て止まる。
「何…?」
「タビちゃん、よくなついたな?さっき、俺なんか威嚇されたぞ?」
「俺もだ…。」
キースは、まぁ何となく狼時代長いから恐がられるのは分かるが、アズなんて全くの無害故に動物に嫌われる事が珍しい。
私がタビを見ると、
『ご主人様以外の男の人にゃんて、嫌いなんだもにょ…。』
ニャッ、と顔をそっぽ向ける。
「ふふ…男の人が嫌なんだって。で?アランがどうしたの?」
「あぁ…アランがここまで来てシオンに帰るって言うんだよ…。」
「はぁ~!?」
ばつが悪そうにアランは目を瞑りながら、二度三度と手のひらを私に向けた。
「一度っ!一度帰るって言ったんだけど~。父上と色々直接会って話したい事あるしさぁ~。」
「ラルファ国王が話を通してくれているだろう?」
キースが腕組みしながら問いかけるも、アランは引かない。
「いや、それとは別件で色々ね…?色々諸々あるのよ~?困っちゃうね~?」
「…はぁ?」