記憶 ―砂漠の花―

タビの小さな体が、先生の魔力に包まれた。

タビの姿は、緑の光で見えなくなり、次第に光は大きく膨らんでいく。


この様子は、私には見えていたが、多分一瞬の事で皆には見えていない。


すぅっと光が和らぐと、そこには幼い女の子の姿。


ふわふわの黒髪。
花柄の黒のワンピースに身を包み、白い靴を履いた足を揺らしている。


タビは、人間の女の子へと姿を変え、先生の膝の上で、可愛らしくふてくされていた。



「アタシ、人間の体って動きにくくって嫌いよぉ。」

「可愛い~なぁ、タビちゃん。」

アランが、タビを見るとすぐに自分の膝を叩き、『おいで』するが、タビは先生にしがみ付き離れない。


「…アタシ、特にアランが嫌いだわ…」

完全に拒否されているアランが本当に少しだけ憐れになった。




タビは、この通り強気でやんちゃな子猫ちゃん。

偵察なんて、お手のもにょよ!と言いながら話し出した。


「…アタシ、お城に忍び込んでね。こっしょりと会話を盗み聞きしようと思っていたのだけりぇど、お庭でリフィル様に見ちゅかってしまいましたの。」

「……!?」

私たちは、出だしからタビの話に食い付いていた。

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