記憶 ―砂漠の花―
私は自分の感覚を確かめる。
全てに対する感覚が鈍くなったかんじ。
先程から私の変貌を見て騒いでいる動物たちの鳴き声も、言葉は分からない。
「うわぁ…タビとレンとラオウが何言ってるか全然分からない…。初めて~ッ!うわぁ~!」
馬たちが急にご機嫌に騒ぎ出す。
「何言ってるか分からないからって、今だとばかりに悪口言わないでよ!?」
ラオウが、ヒヒィンと一言鳴いて、静かになる。
『解除』している先生が笑いながら私に伝えた。
「なんで分かるんだ!?って。」
「言葉は分からなくても付き合い長いのよ?あんた達の動きと鳴き声で大体分かっちゃうわ。」
アズが、未だにチラチラと私を盗み見ていた。
私が視線を返すと顔を背ける。
その繰り返しに、そんなアズの照れた様子に、私の心は踊り顔はゆるんでいく。
今までは、動物たちの声や、人の気配、空気の変化、人の感情の変化など、有りとあらゆる情報が体に自然と入ってきていた。
それらに蓋をした私には世界は変わって見えた。
「これが…普通の感覚…!」
1つ1つへの感動も、いつもより大きく感じる。