記憶 ―砂漠の花―
昨日も感動した、この穏やかな光景でさえ、今は違って見えるのだ。
気持ちの良い朝。
そよそよと吹く緑色の風は、昨夜とはまた違った明るい光を帯びている。
脇で流れる小川の音に、小鳥のさえずり。
私は大きく深呼吸した。
周囲への感覚に蓋をした分、自分の感情の変化に敏感になっているようだった。
それに加えて、昨夜、アズに対する自分の感情を認めてしまった事も大きく表れているのだろう。
自分の変化に浮かれて、確認し忘れていた事があるのに気付く。
「あ、先生。それでアランは…?叔父様とは…?」
「あ、あぁ…。」
先生が食後のお茶をすすりながら答える。
「さっき、アイリさんが来る前にも少し話していたんだが…」
カップをテーブルにカチャと小さく音を立てて置いた。
「アランくんは後日に合流という事で…。しばらく別で動いてもらうことになった。」
うんうん、とアズが嬉しそうに頷く。
先に聞いていたらしい。
「別って…?何かする事あるの?」
「もし、万が一、戦争になった時の対策と、あとマルクについては謎が多いからね。彼の意図を、情報収集してもらってる…」
「そっか、マルクは元々シオン国の人だものね?」