記憶 ―砂漠の花―

上機嫌だったアズが、ふと思い出したかのように口を開く。


「あ、先生。サイルに向かう前に、俺も父上と連絡を取り確認したいことがあるんですが…」

「確認したい事とは…?」

先生が眉間にしわを寄せた。


「はい…。ラルファの過去の事、母上の事、それに戦争の背景…。歴史書に書いてある上っ面だけでなく、もっと深い部分を知りたいんです。」

「あぁ…確かに矛盾を感じる時があるんだよな。ウィッチ狩りにしても、もしかしたらマルクが関係しているかもしれない…。」

キースもアズの意見に賛成したのだが、先生は首を振った。


「…その辺りの話もアランくんに任せてある。」

「それもアランに!?」


私が首を傾げると、


「あぁ…。今頃アランくんと両国王で話し合われているだろうから…。私たちはサイルに一足早く行って待っていよう。」

先生は眉間に力を込めたまま、そう私たちを諭した。
先生のおかしな様子にお互い顔を見合わせながらも、その場では納得した形を取った。


まだ何かあるの?

未だ私たちの知らない、隠された真実が…。


先生は、それを知っているのではないか。
いや、昨夜聞いてしまったのではないか。

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